【ニュースから考える個人情報保護】自治体が利用する外部サービスと不正アクセス

自治体が住民向けに提供する防災メールなどの情報配信サービスで、不正アクセスによる個人情報漏えいのおそれが公表されました。

株式会社アルカディアが提供する情報配信サービス「SpeeCAN RAIDEN(スピーキャン・ライデン)」をめぐり、複数の自治体が登録情報への影響を発表しています。

今回の事案は、防災情報の配信にとどまらず、自治体が民間事業者のシステムを利用して行政サービスを提供する仕組みや、個人情報の管理について考えるきっかけとなります。

自治体の行政サービスには、電子申請や公共施設の予約、ふるさと納税、税金に関する手続き、地域通貨、生活支援サービスなど、さまざまなデジタルサービスがあります。サービスごとに仕組みや取り扱う情報は異なりますが、利用者が個人情報を登録・入力する場合には、サービスの提供元や情報の利用目的を確認することが重要です。

また、こうしたニュースに便乗し、自治体やサービス提供事業者を装って情報の再登録や確認を求めるメール・SMSが届く可能性にも注意が必要です。

株式会社アルカディアが不正アクセスを公表

株式会社アルカディアは2026年10月13日、自社が提供する「SpeeCAN RAIDEN」に第三者による不正アクセスがあり、個人情報が漏えいした可能性があると公表しました。

同社の発表によると、10月11日午後4時30分に不正アクセスが疑われる不審な挙動を確認し、翌12日午前3時ごろに侵入経路を塞ぐ応急措置を実施。その後、影響範囲の調査を進めています。

同社が公表した推定値では、メールアドレス約313万6,000件、電話番号約10万5,000件、FAX番号約1万5,000件が、漏えいした可能性のある情報として挙げられています。これらは調査中の推定件数であり、実際に外部へ流出した件数が確定したという意味ではありません。

対象となる可能性がある情報には、連絡先の氏名、メールアドレス、電話・FAX番号、担当者・契約情報、配信履歴に保存された本文の記載内容などが含まれます。具体的な情報の種類や影響範囲は、利用しているサービスによって異なります。

また、同社は10月14日、「NET119」や「119RAIDEN」についても、不正アクセスの形跡と個人情報漏えいの可能性を公表しました。公式ブログでは、その後の調査により対象外と判明したサービスやURLについても更新情報が掲載されています。対象サービスや最新の状況については、事業者の発表を確認する必要があります。

参照:株式会社アルカディアの発表/SpeeCAN RAIDEN公式ブログの調査状況

さいたま市や横須賀市など、自治体への影響も公表

さいたま市

さいたま市は2026年10月13日、防災情報配信システムへの不正アクセスに伴い、個人情報が漏えいした可能性があると発表しました。

市の発表では、防災行政無線メールに登録された34,783件のメールアドレスと、災害時防災情報電話サービスに登録された73件の氏名・電話番号について、漏えいした可能性があるとされています。

参照:さいたま市の発表

横須賀市

横須賀市も10月13日、防災情報メール、防災情報FAX配信サービス、防災情報電話配信サービス、防犯あんしんメールの4サービスについて、登録情報が漏えいした可能性を公表しました。

同市の発表では、防災情報メールのメールアドレス47,065件、FAX配信サービスの996件の氏名・事業者名や連絡先、防災情報電話配信サービスの11件の氏名・連絡先、防犯あんしんメールのメールアドレス10,848件が、漏えいした可能性のある情報として挙げられています。

横須賀市は対象サービスの停止などを公表し、サービス停止中の防災・防犯情報については、公式ウェブサイトや公式SNS、防災行政無線などで発信するとしています。これらの数字は漏えいの可能性がある情報の件数であり、実際に外部へ流出した件数が確定したことを意味するものではありません。

参照:横須賀市の発表

知多市

知多市は10月15日、市が利用する「SpeeCAN RAIDEN」への不正アクセスについて、2026年10月14日現在の状況を公表しました。

同市によると、同システムは市職員用の災害時参集メールとしてのみ利用しており、市民の個人情報の漏えいはないとしています。一方、職員の登録情報については漏えいの可能性があるとしており、影響の有無や範囲は利用するサービスによって異なることが分かります。

参照:知多市の発表

豊橋市

豊橋市も10月14日、「豊橋ほっとメール」の運営会社に対する不正アクセスについて公表しました。

市は、利用しているサービスが今回の不正アクセスの対象外だったため、豊橋ほっとメールの配信を継続しており、現時点で市の個人情報の漏えいは確認していないと説明しています。

このように、同じ事業者のサービスを利用していても、対象となるシステムや利用環境によって影響は異なります。利用者は、全国的なニュースだけで判断せず、自分が利用する自治体の公式発表を確認することが重要です。

参照:豊橋市の発表

自治体の行政サービスを支える外部システム

自治体が住民に提供するサービスには、防災情報メールのほか、電話やFAXによる情報配信、緊急通報サービスなど、さまざまなものがあります。また、行政手続きや日常生活を支えるサービスにも、システムやアプリが利用されています。

こうしたサービスでは、システムの開発や運用、情報配信などを民間事業者に委託している場合があります。住民にサービスを案内・提供する主体は自治体であっても、そのサービスを支えるシステムの一部を外部事業者が提供・運用していることがあります。自治体の公式サイトから利用できるサービスであっても、システム全体を自治体が直接運営しているとは限りません。

ただし、外部事業者を利用しているという事実だけで、個人情報の管理主体や、問題が発生した際の責任分担を一律に判断することはできません。具体的な役割や責任は、サービスの仕組みや契約内容、個人情報の取り扱いに関する規定などによって異なります。

今回の事案で影響が公表されたのは、特定の情報配信システムや、それを利用するサービスです。電子申請や施設予約など、ほかの行政サービスにも影響が及んでいると確認されたわけではありません。

ここでは、自治体や行政機関のサービスで利用される代表的な分野を紹介します。以下は一般的な例であり、今回の事案で影響が確認されたサービスの一覧ではありません。

1.電子申請・行政手続き

自治体への申請、届出、アンケート、各種手続きなどには、電子申請サービスが利用されています。

代表例として、民間事業者が提供する「LoGoフォーム」「Graffer スマート申請」「GovTech Express」などや、国のマイナポータルを通じて利用する「ぴったりサービス」、都道府県と市町村が共同で導入する電子申請システムなどがあります。

手続きの内容によっては、氏名、住所、電話番号、メールアドレス、申請内容などの入力が必要です。ただし、必要な情報は手続きごとに異なります。

利用する際は、申請先となる行政機関と、実際に情報を入力するサービスの提供元を確認しましょう。電子申請サービスの名称だけでなく、入力する情報や利用目的についても、案内やプライバシーポリシーを確認することが大切です。

2.公共施設の予約システム

体育館、公民館、文化施設、会議室などの空き状況の確認や利用申し込みには、公共施設予約システムが利用されています。

利用者登録が必要な場合、氏名、メールアドレス、連絡先などの登録や、窓口での本人確認が求められることがあります。一方、空き状況の閲覧など、一部の機能は登録なしで利用できる場合もあります。

施設の管理者と予約システムの提供事業者は、必ずしも同じではありません。利用登録の際は、施設を管理する自治体や団体と、予約システムの運営主体を確認しましょう。

3.防災・防犯情報のメール配信やアプリ

災害情報、避難情報、防犯情報、地域のお知らせなどを届けるため、登録制メールやスマートフォンアプリを利用する自治体もあります。

メール配信サービスでは、メールアドレスや配信地域、受信したい情報の種類などを登録する場合があります。アプリやLINE公式アカウントとの連携では、地域や通知内容の設定が必要になる場合があります。また、位置情報を利用する機能では、端末側で位置情報へのアクセス許可を求められることがあります。必要な権限はサービスや機能によって異なります。

今回のSpeeCAN RAIDENの事案では、防災情報のメール配信に加え、電話・FAXによる情報配信や緊急通報に関連するサービスについても、影響の可能性が公表されています。ただし、すべての防災アプリや情報配信サービスが対象になっているわけではありません。

登録前には、登録情報の利用目的、サービスの提供元、配信停止や退会の方法を確認しましょう。

4.ふるさと納税のポータルサイトと寄付後の手続き

ふるさと納税では、「ふるさとチョイス」「さとふる」「楽天ふるさと納税」などの民間ポータルサイトを通じて寄付を申し込める場合があります。

また、寄付後のワンストップ特例申請などでは、「自治体マイページ」のようなオンライン手続きサービスや、マイナンバーカードを利用した本人確認・電子署名に対応する「IAM(アイアム)」などのアプリが利用される場合があります。それぞれのサービスの機能や対応する手続きは異なります。

寄付の申し込みでは、寄付者の氏名、住所、連絡先、返礼品の送付先、決済に必要な情報などを入力するのが一般的です。寄付先の自治体名、申し込み内容、決済条件、個人情報の利用目的を確認し、自治体の公式案内から正規の申し込み先にアクセスすることが大切です。

5.税金・社会保障などのオンライン手続き

地方税の電子申告に利用される「eLTAX(地方税ポータルシステム)」や、子育て・社会保障などの行政手続きに利用される国のオンラインサービスなどがあります。

手続きによっては、マイナンバーカードを用いた本人確認や電子署名、申告内容などの入力が必要です。

こうしたサービスは、一般的な会員登録とは異なり、制度や手続きに基づいて利用されるものもあります。申請先となる行政機関と、実際の入力先を確認して利用しましょう。

6.地域通貨・デジタルポイントサービス

地域経済の活性化や住民サービスを目的として、デジタル地域通貨やポイントサービスを導入する自治体もあります。

サービスによっては、アカウント登録、本人確認、チャージ、決済などに伴って、利用者情報や取引情報が取り扱われます。

必要な情報や管理主体はサービスごとに異なるため、登録画面だけでなく、利用規約やプライバシーポリシーも確認することが大切です。

7.図書館・ごみ分別・子育てなどの生活支援サービス

図書館の貸出予約、ごみ分別アプリ、子育て情報サイトなどにも、外部のシステムやアプリが利用されることがあります。

情報の閲覧だけなら登録不要でも、貸出予約、通知設定、相談、問い合わせなどを利用する際には、利用者情報の入力が必要になる場合があります。

サービスの提供元と、自治体が提供する情報や行政サービスとの関係を確認しましょう。

個人情報を入力する前に確認したいこと

外部サービスを利用する際は、次の点を確認することが重要です。

  • サービスの提供元:国、自治体、民間事業者、共同運用組織のどこが提供しているか。LINE連携や外部クラウドサービスなど、提供形態も確認しましょう。
  • 行政手続きの主体:申請や届出を受け付けるのは、どの行政機関か。
  • 入力情報と利用目的:何を入力し、どのような目的で利用されるか。
  • 情報の取り扱い:保存、第三者提供、業務委託、削除などの条件が示されているか。
  • 問い合わせ先:操作方法やシステムエラーについてはサービス提供事業者、制度や手続きの内容については自治体の担当窓口が問い合わせ先となる場合があります。各サービスの案内に従って確認しましょう。

自治体の公式サイトから案内されていることは、正規のサービスかどうかを確認するうえで重要な手掛かりです。ただし、リンクが掲載されていることだけで、サービスの運営主体や個人情報の管理責任の範囲まで一律に判断することはできません。

大切なのは、外部サービスだから一律に避けることでも、公式サイトからリンクされているから無条件に信用することでもありません。誰がサービスを提供し、誰が手続きを受け付け、入力した情報がどのように扱われるのかを、サービスごとに確認することです。

再登録や情報確認を装うメール・SMSに注意

個人情報漏えいに関するニュースが報じられた際には、その不安につけ込んだフィッシング詐欺にも警戒が必要です。自治体やサービス提供事業者を装い、登録情報の確認や再登録を求める連絡が届いても、すぐにリンクを開いたり、情報を入力したりしないようにしましょう。

例えば、次のような内容のメールやSMSには注意が必要です。

  • 「個人情報漏えいの対象者です」として、確認用URLへのアクセスを求める
  • 「防災メールの再登録が必要です」「サービス再開のため手続きしてください」と入力を促す
  • 「登録情報の確認が必要です」「本人確認をしてください」として、氏名・住所・電話番号などを入力させる
  • 自治体やサービス提供事業者を名乗り、パスワードやクレジットカード情報を要求する
  • 「本日中に手続きしないと利用停止になります」などと、不安や焦りをあおって操作を急がせる

これらは便乗詐欺で想定される手口の例であり、すべてが今回の事案で実際に確認されたという意味ではありません。正規の案内か判断できない場合は、メール内のURLを開かず、自治体や事業者の公式ウェブサイトを自分で開いて確認しましょう。

送信元の表示名やロゴが本物に見えても、それだけで正規の連絡とは判断できません。メールやSMSに返信して個人情報を伝えることも避けましょう。

参照:SpeeCAN RAIDEN公式ブログの調査状況・注意喚起

不審な連絡を受け取ったときの対応

  • 身に覚えのないメールやSMSのURLを安易に開かない
  • 不審な添付ファイルを開かない
  • パスワード、口座情報、クレジットカード情報などを入力しない
  • 再登録や情報確認が必要と書かれていても、公式発表を確認するまでは操作しない
  • すでにパスワードを入力してしまった場合は、正規の公式サイトから変更し、必要に応じて関係する事業者や相談窓口に連絡する

メールアドレスなどが漏えいした可能性があることと、パスワードや金融情報まで流出したことは同じではありません。公表されている情報を確認し、必要以上に不安にならず、公式発表に沿って対応することが大切です。

利便性と個人情報保護を両立するために

防災情報や行政サービスのデジタル化は、必要な情報を住民に迅速に届け、申請や予約などの手続きを便利にするうえで重要な役割を担っています。一方で、外部事業者のシステムを利用する場合には、サービス提供元を含めた個人情報の安全管理が欠かせません。

今回の事案をきっかけに、自治体には、調査の進展に応じた正確で分かりやすい情報提供が求められます。また、システムを運用する事業者にも、適切な安全対策と、問題が発生した際の迅速な対応が求められます。

住民も、利用しているサービスが対象となっていないか公式発表を確認し、個人情報を入力する前にはサービスの提供元や利用目的を確かめることが大切です。不審なメールやSMSを受け取った場合には、記載されたリンクからではなく、公式サイトなどの信頼できる経路から情報を確認しましょう。

今回公表された内容は、すべての自治体や同種のサービスで同じ情報が漏えいしたことを意味するものではありません。対象となるサービスや情報は自治体ごとに異なるため、利用している自治体の公式発表を確認してください。

※本記事は2026年10月15日時点で公表されている情報をもとに作成しています。「漏えいの可能性」と「実際の漏えいが確認されたこと」は区別して記載しています。サービスの導入状況や個人情報の取り扱いは自治体・サービスごとに異なります。新たな発表により内容が更新される場合があります。

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