御殿場市「富士山の恵み産業パーク」計画 時之栖・CCCと基本協定、2030年開業目指す


「ごてんば水麓プレイス」を基本コンセプトに

御殿場市が新橋地区で整備を進める「(仮称)富士山の恵み産業パーク」。国道138号沿いの約4ヘクタールの敷地に、観光客向けのマーケットや飲食施設、子どもの遊び場、地域住民や事業者の交流機能などを備えた複合施設を整備する計画だ。

市は2026年10月26日、運営・維持管理等の実施予定者として選定された時之栖とカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)グループとの基本協定を締結した。開業は2030年を目指している。

この事業は、単に新しい観光施設を建設する計画ではない。市が公共施設として造成・建築を行い、民間事業者の運営ノウハウを設計段階から取り入れる「EOI方式」を採用している点が特徴だ。

計画地は、御殿場市新橋地区の国道138号、鮎沢交差点から細町交差点にかけての北側農用地。約4ヘクタールの敷地に、富士山の伏流水など地域の水資源を生かした施設を整備する構想で、基本コンセプトには「ごてんば水麓(すいろく)プレイス」を掲げている。

施設は、観光客を主な対象とする「水のマーケットゾーン」と、地域住民や事業者の交流を想定した「麓のリトリートゾーン」を中心に構成する計画だ。水のマーケットゾーンには、観光客向けのマーケットや飲食機能、キッズエリアなどを想定。麓のリトリートゾーンには、地域の事業者や住民が交流できる機能、スタートアップ支援、地域ブランドの発信などを盛り込む構想となっている。

このほか、中央多目的広場や大屋根のある回廊、高速バスターミナル、防災機能なども計画に含まれる。施設の具体的な配置や規模、機能については、運営予定者の意見を取り入れながら今後さらに検討される。

なお、市が示しているのは「道の駅的な機能を持つ施設」という位置付けであり、正式な登録を受けた道の駅として整備する計画とは区別して理解する必要がある。

三菱地所設計と時之栖・CCC、それぞれの役割

事業主体は御殿場市で、施設の造成や建物の建設を市が担う。

基本構想・基本計画の策定には、株式会社三菱地所設計が関わってきた。同社は市から業務を受託し、施設の基本コンセプトや機能、敷地配置などの検討を進めている。富士山の眺望や地域の水資源を生かした空間づくりに加え、地元企業・団体などとの調査やワークショップにも取り組んできた。

一方、2026年10月26日に市と基本協定を締結したのが、時之栖とCCCグループだ。今後、運営・維持管理の実施予定者として、施設の機能や配置、運営方法、収支計画などについて市や設計者と協議を進める。

時之栖は、観光・飲食・物産・地域連携などの事業経験を持つ。CCCは、空間づくりや企画、情報発信、ライフスタイル提案などの知見を持つ。両者の経験を組み合わせ、施設の魅力と運営の持続性を高めることが期待される。

なお、基本協定の締結は、指定管理者としての最終決定や建設工事の契約を意味するものではない。今後の協議や手続きを経て、正式な運営体制が整えられる。

民間資金で建てるPFIではなく、市が整備する公設方式

今回の事業を理解するうえで重要なのが、整備・運営の手法だ。

2026年4月時点では、建設費の試算や事業方式の検討が報じられていた。その後、市は運営予定者を設計段階から関与させるEOI方式を採用し、2026年6月に運営・維持管理等実施予定者の公募型プロポーザルを開始した。

EOIは「Early Operator Involvement」の略で、施設の運営者を早い段階から計画に参加させる手法だ。施設が完成してから運営者を決めるのではなく、設計や施設計画の段階で運営側の意見を取り入れ、実際に使いやすく、維持管理しやすい施設を目指す。

今回の計画では、市が造成や建物の建設を担い、運営予定者が需要予測や施設の機能、配置、規模、建設費・維持管理費などについて意見や助言を行う。什器や備品などは原則として事業者側が負担する整理となっている。

つまり、民間資金で施設を建設するPFI方式と同じものではない。市が公共施設として整備しながら、民間の運営ノウハウを設計段階から反映させる方式だ。

建設費は約50億円の試算、2026年度予算とは別

事業費については、数字の意味を分けて見る必要がある。

2026年4月に報じられた建設費の試算は、公設で整備する場合に約50億円というものだ。ただし、これは建物の建設費に関する試算であり、用地取得や造成、備品、開業準備、開業後の維持管理費などをすべて含めた総事業費が約50億円に確定したという意味ではない。

また、2026年度の市当初予算には、関連事業費として6,670万1,000円が計上されている。これは基本計画策定などを含む当該年度の事業推進予算であり、施設全体の建設費ではない。

現時点で、事業全体の最終的な総額や、開業後の年間維持管理費が確定しているわけではない。今後の設計や運営協議を通じて、整備費と運営費の両面から具体化されることになる。

年間300万人の集客目標と地域への経済効果

市が掲げる集客目標は年間300万人。市内には年間1,500万人を超える来訪者があるとされるが、観光施設を訪れた人がそのまま市内を回遊するとは限らない。

今回の施設には、観光客を呼び込むだけでなく、市内の飲食店や商店、観光施設などへ人の流れを広げる役割も期待されている。いわば、御殿場を通過する人を地域に呼び込み、滞在や消費につなげるための拠点という位置付けだ。

ただし、年間300万人は市が掲げる目標であり、運営事業者に課された確定的な契約上の集客ノルマではない。実際の需要や売上、運営方法については、運営予定者の提案や今後の協議を通じて精査される。

重要なのは、施設に何人が訪れるかだけではない。来訪者がどれだけ市内に滞在し、周辺の観光施設や商店、飲食店などを利用するのか。地域の事業者にどの程度の経済効果が生まれるのかが、事業の成果を判断するうえで大きなポイントになる。

駐車場や道路整備、周辺施設との連携も課題

大規模な集客を目指す施設だけに、交通対策も重要になる。

計画では、敷地内に一般車両約310台、観光バス5台を想定するほか、第2駐車場や周辺の民間駐車場との連携も検討されている。市議会で示された説明には、敷地外の駐車スペースを含めた大規模な駐車場構想もあるが、具体的な確保台数や運用方法については、今後の調整が必要だ。

また、周辺道路の交通量増加や混雑への対応も避けて通れない。市は東部幹線などの道路整備を含め、アクセス経路や出入口、駐車場への導線などを検討している。

施設単体の集客力だけでなく、周辺道路や既存観光施設との連携を含めた地域全体の交通・回遊計画が求められる。

開業後の運営費と市の財政負担

施設を建設すれば事業が終わるわけではない。むしろ、公共施設として長期的に運営していくためには、開業後の維持管理費や運営収支が重要になる。

市が公表した募集資料では、収益施設の売上などを非収益機能の運営に充てる考え方が示されている。また、指定管理料は運営に必要な費用の不足分を補うことを基本に、今後協議する仕組みとなっている。

駐車場や子どもの遊び場など、一部機能の有料化も検討対象となっている。売上の一部を地域に還元する仕組みについても、事業者からの提案を踏まえて検討される。

一方で、現時点では年間の維持管理費や指定管理料の具体的な金額は公表されていない。収益事業が想定どおりに進まなかった場合に、市がどの程度の負担を担うことになるのかも、今後確認すべき点だ。

公共施設として地域に必要な機能を維持しながら、どこまで事業として持続可能な運営ができるのか。建設費だけでなく、開業後の財政負担を含めて検証していく必要がある。

2030年の開業を目指す 今後の計画具体化に注目

市は2026年10月26日に時之栖・CCCグループと基本協定を締結し、今後は運営予定者の意見を反映しながら、施設の基本計画や設計、運営方法などの具体化を進める。

開業は2030年を目指している。ただし、今後の設計や工事、関係機関との調整などによって工程が変わる可能性もあり、開業時期や施設内容は引き続き確認が必要だ。

「富士山の恵み産業パーク」は、観光客を呼び込む新たな拠点であると同時に、御殿場の地域資源や事業者をつなぐ場としても期待されている。

一方、約50億円とされる建設費の試算、年間300万人という集客目標、開業後の維持管理費や市の財政負担など、検証すべき課題も少なくない。

施設を造ること自体が目的になってはならない。訪れた人が地域を巡り、地元の事業者に利益が還元され、住民にとっても利用価値のある施設になるのか。御殿場市の新たな観光・交流拠点として、その実効性が問われることになる。

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