情報漏洩や不正アクセスに関するニュースが相次ぐ中、私たち一人ひとりにも、日常的に利用するWebサービスやオンライン決済の安全性を見直すことが求められています。
企業が保有する個人情報の漏洩は、利用者がどれだけ注意していても完全には防げません。サービスを提供する企業には、情報を適切に管理し、システムの脆弱性を修正するなど、必要なセキュリティ対策を講じる責任があります。
一方で、利用者自身にも、不正ログインやフィッシング詐欺などによる被害のリスクを減らすためにできることがあります。大切なのは、すべての攻撃を防ごうとすることだけではなく、被害に遭いにくくし、異常に早く気づき、被害を最小限に抑えられる状態を整えておくことです。
一つの情報漏洩が、次の被害につながる
情報漏洩の怖さは、漏れた情報だけにとどまりません。一つのサービスから流出した情報が、別のサービスへの不正ログインや、さらなる詐欺被害につながる可能性があります。
例えば、複数のサービスで同じパスワードを使い回していた場合、一つのサービスで漏洩した認証情報が、別のサービスへの侵入に悪用されるおそれがあります。また、メールアカウントを乗っ取られると、パスワードの再設定を通じて、ほかのアカウントまで不正に利用される可能性があります。
さらに、氏名やメールアドレスなどの情報が、偽の通知や標的型の詐欺に悪用されることも考えられます。複数の情報が組み合わされることで、攻撃の信頼性が高まり、被害が連鎖的に広がる場合もあります。
つまり、情報漏洩は一つのサービスだけの問題で終わるとは限りません。
だからこそ、サービスごとに異なるパスワードを設定すること、多要素認証を利用すること、メールアカウントを重点的に保護することが重要になります。
一つの情報が漏れることを完全に防げなくても、その情報を次の被害につなげない。 個人のセキュリティ対策では、この視点が欠かせません。
1. 偽の通知にだまされない
情報漏洩やアカウントの異常を知らせるメールやSMSを装い、偽サイトへ誘導するフィッシング詐欺に注意が必要です。
「アカウントが停止される」「不正アクセスを検知した」「本人確認が必要」などと不安をあおり、IDやパスワード、クレジットカード情報を入力させようとする手口があります。
届いた通知のリンクを安易に開かず、公式アプリやブックマークから正規のサイトにアクセスして確認しましょう。通知に記載された電話番号ではなく、公式サイトで確認した窓口を利用することも重要です。
2. アカウントを乗っ取られにくくする
複数のサービスで同じパスワードを使い回していると、ひとつのサービスから認証情報が漏洩した際に、ほかのサービスへの不正ログインに悪用されるおそれがあります。
サービスごとに異なるパスワードを設定し、パスワード管理ツールを活用しましょう。パスキーに対応したサービスではパスキーへの移行を検討し、多要素認証も有効にすることが大切です。
特に、メール、金融サービス、SNS、ネット通販などは優先的に対策したいアカウントです。メールアカウントを乗っ取られると、ほかのサービスのパスワード再設定にも悪用される可能性があるため、重点的な保護が必要です。
3. スマートフォンやパソコンを最新の状態に保つ
OSやアプリの更新には、セキュリティ上の弱点を修正するものがあります。更新を先延ばしにせず、自動更新を有効にするなど、常に最新の状態を保つことが重要です。
また、サポートが終了した機器やソフトウェアは、修正プログラムが提供されなくなる場合があります。長期間使用している端末やソフトウェアについても、サポート状況を確認しましょう。
4. 不正利用を早く発見する
クレジットカードや電子決済サービスの利用通知を設定し、利用明細を定期的に確認しましょう。サービスによっては、ログイン履歴や登録情報の変更履歴も確認できます。
身に覚えのない少額決済やログイン通知も見逃さないことが大切です。不審な利用を発見した場合は、カード会社やサービスの公式窓口に連絡し、必要に応じて利用停止やパスワード変更などの対応を取りましょう。
5. 大切なデータをバックアップする
写真、書類、連絡先など、失いたくないデータは定期的にバックアップしておきましょう。ランサムウェアによるデータの暗号化、機器の故障、誤操作などによるデータ消失に備えることができます。
可能であれば、普段使用している端末から切り離した保存先にもバックアップを保管し、必要なときに復元できるか確認しておくと安心です。
6. 端末の紛失や不審なアプリに備える
スマートフォンやパソコンには画面ロックや生体認証を設定し、端末を放置しないようにしましょう。紛失時に備え、端末を探す機能や遠隔ロック・消去の設定を確認しておくことも有効です。
アプリは公式ストアなど信頼できる配布元から入手し、不要な権限を与えないようにします。公共Wi-Fiを利用する際は接続先を確認し、不審な警告が表示されたサイトではパスワードや決済情報を入力しないことも重要です。
7. 不要なアカウントや登録情報を整理する
長期間利用していないECサイトやWebサービスにも、氏名、メールアドレス、住所などの個人情報が保存されている場合があります。
不要なアカウントは、必要なデータや購入履歴などを確認したうえで退会を検討しましょう。また、サービスに登録する情報は必要最小限にとどめ、必要のない個人情報を安易に入力しないことも大切です。
ただし、退会しても法令上の保存義務などにより、一部の情報が直ちに削除されない場合があります。
8. 被害に気づいたら、速やかに対応する
不正ログインや情報漏洩が疑われた場合は、放置せず、サービスの公式窓口で対応方法を確認しましょう。
パスワードの変更、ほかの端末からのログアウト、決済の停止など、状況に応じた対策を取ることが重要です。同じパスワードをほかのサービスでも使っていた場合は、それらのパスワードも変更しましょう。金銭被害や犯罪が疑われる場合は、金融機関や警察などへの相談も検討してください。
情報漏洩を防ぐ責任と、利用者ができる対策
情報漏洩は、利用者の不注意だけで起きるものではありません。企業のシステムへの不正侵入や管理上の問題など、利用者側では防ぎようのない原因もあります。利用者が基本的な対策を徹底していても、サービス提供者側で情報漏洩が発生する可能性は残ります。
そのため、企業には個人情報を適切に管理し、システムを安全に保つための対策を継続することが求められます。漏洩が発生した場合には、状況に応じた調査や利用者への情報提供、被害拡大の防止なども重要です。
一方、利用者は、偽の通知にだまされないこと、アカウントを乗っ取られにくくすること、不正利用を早く発見することを基本に、端末の更新やバックアップなどの対策を組み合わせることができます。
サイバーセキュリティは、企業側の対策と利用者側の自衛策の両方によって支えられます。情報漏洩のニュースを単に不安視するだけでなく、自分が利用しているサービスや端末の設定を見直し、できることから対策を進めることが大切です。

