ネット通販やSNS、メール、動画配信、金融サービスなど、私たちは日々、多くのWebサービスを利用しています。一方で、インターネット上のサービスへの不正ログインは現在も身近な脅威となっています。
情報処理推進機構(IPA)によると、2026年の「情報セキュリティ10大脅威」でも、個人向けの脅威として「インターネット上のサービスへの不正ログイン」が11年連続で挙げられています。また、2025年7月にはIPAの情報セキュリティ安心相談窓口に、不正ログインに関する相談が過去最多となる144件寄せられました。
不正ログインの原因は、単純なパスワードだけではありません。サービスからの情報漏えいやフィッシングなどによってID・パスワードが盗まれ、それが別のサービスへの攻撃に利用されるケースもあります。
なぜ「パスワードの使い回し」が危険なのか
特に注意したいのが、複数のサービスで同じパスワードを使い回すことです。
例えば、あるWebサービスからIDとパスワードが漏えいしたとします。その組み合わせを攻撃者が入手すると、別のECサイトやSNS、メールなどに自動的に入力してログインを試みることがあります。これは「パスワードリスト攻撃」や「リスト型攻撃」と呼ばれる手口です。
つまり、1つのサービスで漏れたパスワードが、別のサービスへの侵入口になる可能性があります。
「自分は複雑なパスワードを使っているから大丈夫」と考えていても、そのパスワード自体がどこかから漏えいしてしまえば、強度とは別の問題になります。
IPAも、パスワードについて「できるだけ長く」「複雑に」「使い回さない」ことを推奨しています。
今すぐ見直したい3つの対策
1.サービスごとに異なるパスワードを使う
最も基本的なのは、複数のサービスで同じパスワードを使わないことです。
ただし、利用するサービスが増えると、すべてのパスワードを頭で覚えるのは現実的ではありません。ブラウザやスマートフォンに搭載されているパスワード管理機能や、信頼できるパスワードマネージャーを利用すると、サービスごとに異なるパスワードを設定しやすくなります。
特に、メールアカウントやApple Account、Googleアカウントなど、他のサービスのパスワード再設定にも使われる重要なアカウントは、優先して見直したいところです。
2.多要素認証やパスキーを設定する
パスワードだけに頼らないことも重要です。
「多要素認証(MFA)」を設定すると、IDとパスワードが第三者に知られてしまった場合でも、それだけではログインできない仕組みにできます。
さらに、対応しているサービスでは「パスキー」の利用も有力な選択肢です。パスキーは、パスワードの代わりにスマートフォンなどの端末に保存された認証情報を利用し、指紋認証や顔認証、端末のPINなどで本人確認を行います。
IPAも、不正ログイン対策として多要素認証の利用と、パスワードに代わる認証方式としてのパスキーの利用を推奨しています。
3.ログイン履歴や登録情報を確認する
各サービスの「セキュリティ」や「アカウント設定」を確認し、身に覚えのないログインや登録端末がないか確認することも大切です。
不審なログインを発見した場合は、パスワードの変更だけでなく、多要素認証の設定、登録メールアドレスや電話番号の確認、決済情報の確認なども行います。
特に、同じパスワードを別のサービスでも使っていた場合は、そちらも忘れずに変更する必要があります。
「パスワードが漏れたら終わり」ではない
パスワードが漏えいした場合でも、多要素認証などを設定していれば、不正ログインを防げる可能性があります。
一方で、注意したいのがフィッシングです。
例えば、実在するサービスを装ったメールやSMSから偽サイトへ誘導され、そこでIDやパスワード、認証コードなどを入力してしまうケースがあります。
IPAには、知人になりすましたSNSのアカウントから認証コードを聞き出され、そのコードを利用してアカウントを乗っ取られる事例も寄せられています。
そのため、「パスワードを複雑にする」だけでは十分とはいえません。パスワードを使い回さないことに加え、多要素認証やパスキーを利用し、不審なメールやSMSのリンクからログインしないことも重要です。
まずは「重要な3つ」から見直す
すべてのアカウントを一度に変更するのが難しい場合は、まず重要なアカウントから始める方法があります。
- メール・Apple・Googleなどの主要アカウント
- ネットバンキングや決済サービス
- AmazonなどのECサイト
- SNSなど、乗っ取られると他人への被害につながるサービス
これらについて、パスワードの使い回しがないか確認し、多要素認証やパスキーが利用できる場合は設定しておきましょう。
被害に遭ってからではなく、今のうちに
不正アクセスは、特別な人だけが遭うものではありません。どこかのサービスから情報が漏えいし、その情報が別のサービスへの攻撃に利用される可能性があります。
だからこそ重要なのは、「自分のパスワードが狙われているか」を考えることよりも、「1つのサービスから情報が漏れても、他のサービスまで被害が広がらない状態」にしておくことです。
パスワードをサービスごとに分ける。多要素認証やパスキーを設定する。不審なリンクからログインしない。
こうした基本的な対策を、被害に遭う前に一度確認しておくことが、身近なWebサービスを守るための大きな一歩になります。
参考情報

