SNS・LINE時代に試されるのはアイデンティティ ― モラリティとリテラシーを超えて | G-news:ごてんばニュース

SNS・LINE時代に試されるのはアイデンティティ ― モラリティとリテラシーを超えて

AI時代に必要なのは「使える人材」の育成であると述べてきましたが、その前段階として、私たちはすでにSNSやメッセージアプリの時代を経験しています。そして今、改めて問われているのは技術そのものではなく、「それを使う人間の在り方」です。最近発生した部活動内での不適切動画拡散のような事案は、単なる情報管理の問題ではありません。そこにあるのは、モラリティとリテラシー、そして何よりアイデンティティの問題です。

SNSとメッセージアプリの違いと共通するリスク

SNSは公開性と拡散性を特徴とします。投稿は不特定多数へ届き、アルゴリズムによって瞬時に広がります。一方、LINEなどのメッセージアプリは本来「閉じた空間」でのやり取りを前提としています。しかし、スクリーンショットや転送機能によって情報は簡単に外部へ流出します。サーバー保存期間や暗号化の有無に関わらず、一度共有された情報は完全には消えません。これがいわゆるデジタルタトゥーです。

問題の本質は、技術の設計ではなく、人間の行動選択にあります。「閉じているから安全」「仲間内だから問題ない」という心理が、倫理的判断を緩めてしまうのです。

グループチャットで働く集団心理

特にグループチャットでは、同調圧力や責任の分散が起こりやすくなります。誰かが不適切な投稿をすれば、周囲も流れに乗ってしまう。多人数の中では「自分一人の責任ではない」という感覚が生まれます。これは心理学でいう責任の希薄化です。

さらに、画面越しのコミュニケーションは相手の表情や感情を読み取りにくく、攻撃性や軽率さを増幅させる傾向があります。閉じた空間であっても、そこでは確実に集団心理が働いているのです。

モラリティとリテラシーの限界

これまでの情報教育は「正しい使い方」や「ルール遵守」を中心としてきました。確かにリテラシーは重要です。フェイクニュースを見抜く力、プライバシーの重要性を理解する力、技術の仕組みを知る力。しかし、それだけでは不十分です。

ルールがあるから守るのか。それとも、誰も見ていなくても守るのか。この差はリテラシーではなく、モラリティ、さらに言えばアイデンティティの問題です。

AI時代に増幅される構造

SNSは感情を増幅させ、AIは意図やバイアスを増幅させます。どちらも中立的な技術ですが、使う人間の価値観を拡張する装置でもあります。倫理観が弱ければ、その弱さが拡大されます。思慮が浅ければ、その浅さが社会へ広がります。

だからこそ問うべきは、「どんなAIを持つか」ではなく「どんな人間がそれを使うか」です。未来を決めるのはツールではなく、主体です。

現代の成熟に必要な三つの柱

教育(クリティカル・シンキング)
AIの出力やSNS情報を無批判に受け入れない力を育てる。「AIが言うから正しい」「みんなが共有しているから問題ない」という依存から脱却する。

倫理(出力責任の自覚)
AI生成物も、転送した画像も、自分が発信した瞬間に「自分の責任」になります。技術のせいにしない当事者意識を持つ。

運用(動的ガイドライン)
単なる禁止ではなく、失敗事例を共有しながらルールを更新し続ける。「動きながら整える」姿勢が成熟社会には不可欠です。

試されているのはアイデンティティ

最終的に問われているのは、「自分はどんな人間でありたいのか」という問いです。周囲に流されるのか。沈黙するのか。止める勇気を持つのか。閉じたグループの中でこそ、自己の在り方が試されます。

アイデンティティとは、肩書きや所属ではなく、「判断の軸」です。外部のルールではなく、内なる倫理の羅針盤を持てるかどうか。それがデジタル社会の成熟度を決めます。

リテラシーから成熟へ

これまでのリテラシー教育は「正解」や「操作法」を学ぶものでした。しかしAI時代に必要なのは、技術との適切な距離感を掴むことです。外部ルールに従うだけでなく、内面的な倫理で判断する力。技術を効率的に使うだけでなく、人間性を保ちながら使う姿勢。

SNSもLINEもAIも、本質的には鏡です。そこに映るのは社会の倫理観であり、私たち一人ひとりのアイデンティティです。

結論

部活動内での不適切動画拡散のような問題は、技術の欠陥ではありません。それは未成熟な判断の結果です。サーバー保存期間でも、暗号化の有無でもない。最終的に社会を形づくるのは、人間の選択です。

モラリティとリテラシーを土台に、その先にある「成熟」を育てること。それは教育の課題であり、組織の責任であり、そして私たち個人の覚悟でもあります。

AI時代に問われるのは、能力ではなく人格。技術ではなくアイデンティティ。今、私たちは静かに試されています。

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