写真を趣味にしていると、一度は「コンテストに応募してみたい」と考えたことがあるのではないでしょうか。しかし、一言にフォトコンテストと言っても、その種類は多岐にわたります。自分の作風に合わないジャンルに応募してしまうと、せっかくの力作も正当な評価を得られないかもしれません。
今回は、写真コンテストを大きく6つのジャンルに分類し、それぞれの特徴や代表的なコンテスト、そして入賞を勝ち取るためのポイントを詳しく解説します。
1. 芸術系(アート・フォトグラフィー)
「何が写っているか」よりも「作家の視点」が問われる世界
芸術系のコンテストは、作者独自の思想やメッセージを表現することが目的です。
- 代表的なコンテスト: 『1_WALL』『JPS展』『Sony World Photography Awards』
- 入賞の鍵: 「どこかで見たことのある写真」を徹底的に避け、独創性(オリジナリティ)を追求すること。1枚の完成度だけでなく、複数枚でメッセージを構成する「組み写真」での応募も、世界観を深く伝えるために効果的です。
2. 観光系(PR・風景フォト)
地域の魅力を最大化し、「行きたい」と思わせる広告写真
自治体や鉄道会社が主催し、パンフレットやポスターへの採用を目的としています。
- 代表的なコンテスト: 『東京カメラ部10選』『日本の自然写真コンテスト』『各自治体の観光フォトコン』
- 入賞の鍵: 鮮やかな季節感や、その土地ならではの象徴的な光景を捉えること。ポスターとして使いやすいよう、文字を入れるための「余白」を意識した構図や、旅の追体験をさせる「人物の配置」も高く評価されます。
3. 報道・ドキュメンタリー系
事実を誠実に伝え、社会に問いかける記録の力
事件、事故、社会問題、あるいは日常の決定的な瞬間を記録するジャンルです。
- 代表的なコンテスト: 『世界報道写真展』『上野彦馬賞』
- 入賞の鍵: 被写体の感情がピークに達した瞬間を逃さないこと。過度なレタッチや演出は厳禁であり、写真の背後にあるストーリーを正確に伝えるキャプション(説明文)も非常に重要です。
4. 商業・広告系
商品の価値を高め、ブランドイメージを構築するプロの技術
商品やサービスを魅力的に見せ、購買意欲をそそるためのジャンルです。
- 代表的なコンテスト: 『APAアワード』『宣伝会議賞(写真部門)』
- 入賞の鍵: 質感や素材感(シズル感)を完璧にコントロールするライティング技術。現代の広告トレンドを反映させた色使いやトーンの選定、そして「商品の価値」を正しく演出する構成力が求められます。
5. ネイチャー・科学系
自然界の神秘や野生動物の生態を克明に記録する
肉眼では捉えきれない微細な世界や、過酷な環境下の自然、野生動物を対象にします。
- 代表的なコンテスト: 『ナショナル ジオグラフィック』『Wildlife Photographer of the Year』
- 入賞の鍵: 毛並みや瞳の輝きまで精緻に描写する圧倒的な解像感。被写体への深い理解に基づいた、希少性の高い瞬間を捉えるための高い技術と忍耐強さが試されます。
6. スナップ・ライフスタイル系
日常の何気ない瞬間に宿る「共感」と「エモさ」
日々の暮らしの中にある面白い偶然や、時代の空気感を切り取るジャンルです。
- 代表的なコンテスト: 『Shot on iPhone』『カメラ雑誌の月例フォトコン』
- 入賞の鍵: 多くの人が共感できる親近感や、光と影の劇的な重なりを瞬時に捉える反射神経。SNS時代にマッチした、一目で心を掴むインパクトや「エモさ」が大切です。
入賞を引き寄せる共通のコツ
どのジャンルにも共通して言えるのは、「過去の受賞作品を徹底的に分析すること」です。主催者がどのような写真を求めているのか、その「出口」を理解することが、入賞への最大の近道となります。また、募集要項(画像サイズや加工の可否、著作権の帰属)の遵守は基本中の基本です。自分の写真がどのカテゴリーで最も輝くかを見極め、戦略的に挑戦してみましょう。
隠れた最重要ポイント: 「誰が審査するのか」を知る
写真コンテストにおいて、作品の良し悪しを判断するのはAIではなく、感情と経験を持った「人間」です。そのため、「誰が審査員を務めるか」によって、当選しやすい写真の傾向は180度変わります。
1. 審査員の専門分野が「合格基準」を決める
審査員の顔ぶれを確認することは、コンテストの攻略法を決定するのと同義です。
- プロ写真家が審査員の場合:光の捉え方、構図の美しさ、シャッターチャンスの希少性など、「写真技術の純粋な高さ」が重視されます。
- アートディレクターやデザイナーが審査員の場合:一枚の写真としての完成度よりも、「デザインの素材としての可能性」が見られます。
- 編集者や学識経験者が審査員の場合:「その一枚が何を語っているか」という「物語性(ストーリー)」が重んじられます。
2. 「作家の好み」というフィルター
審査員が写真家である場合、その人自身の作風(トーンや哲学)は少なからず審査に反映されます。モノクロを好むのか、鮮やかな色彩を重視するのか。審査員の過去の作品や、過去のコンテストで選んだ「選評」を読み解くことで、「その人が美しいと感じる基準」を予測することができます。
3. 主催者側の「大人の事情」を汲み取る
自治体の職員や企業の広報担当者が審査に加わる場合、そこには「PRとしての使いやすさ」という明確なバイアスがかかります。芸術性だけでなく、その土地のランドマークが判別できるか、あるいは「地域の新しい魅力」を再発見しているかといった点も重要になります。
結論:ターゲットを絞って「ラブレター」を書く
写真コンテストに応募することは、審査員に向けて「ラブレター」を送るようなものです。
不特定多数に好かれようとする写真は、誰の心にも残らず埋もれてしまいます。「この先生なら、この光の捉え方を分かってくれるはずだ」「このディレクターなら、この構図の面白さを拾ってくれるはずだ」と、審査員の顔を思い浮かべて作品を選ぶこと。それが、数千の応募作の中からあなたの1枚を「発掘」させる、究極のテクニックなのかもしれません。
あなたの挑戦を後押しできれば幸いです。納得のいく一枚で、ぜひ新しい世界へ一歩踏み出してみてください。

