写真は、撮影場所の光の色(色温度)に大きく影響されます。人間の脳は照明の色を自動的に補正して「白は白」と認識しますが、カメラは光の色を正直に記録しようとするため、対策をしないと見たままの色にならないことがあります。
光源(照明そのものの色)
すべての光には「色温度」という性質があり、単位はケルビン(K)で表されます。
色温度が低い(例: 2000K): ろうそくの光のように、赤みがかったオレンジ色の光になります。
色温度が高い(例: 7000K): 晴天の日の日陰のように、青白い光になります。
体育館で使われる水銀灯やナトリウムランプは、家庭用の照明とは色温度の特性が大きく異なるため、カメラの「オートホワイトバランス(AWB)」が正しく補正しきれず、緑やオレンジの色被りを起こします。これが、写真の色が不自然になる最も根本的な原因です。
壁(反射による色の追加)
壁は、巨大な色のついたレフ板(反射板)のように振る舞います。
天井の照明から出た光が壁に当たると、その光は壁の色を帯びてから被写体に届きます。例えば、緑色の壁があれば、被写体には「天井からの直接光」と「壁で反射した緑色の光」の両方が当たっている状態になります。
この「壁の色の反射光」が、光源本来の色に加わることで、色被りをさらに悪化させたり、複雑にしたりします。被写体が壁際にいるほど、この影響は顕著になります。
その他の要因(ミックス光と床)
体育館やホールは、これらの要因が組み合わさった「ミックス光」の環境であることがほとんどです。
例1: 天井の「水銀灯(緑っぽい光)」+ 窓からの「自然光(青白い光)」
例2: 天井の「水銀灯(緑っぽい光)」+ 壁からの「反射光(壁の色)」
カメラのオート機能は、基本的に「1種類の光」を基準に色を調整しようとします。しかし、このように複数の色や性質の光が混在していると、カメラが「どの光に合わせれば良いか」を判断できなくなり、結果として不自然な色合いの写真が生まれてしまうのです。
床も面積が広いため、壁と同様に光を反射し、色被りの一因となります。
これらの問題を解決するためには、「現像での後補正」、「マニュアルホワイトバランスの設定」が非常に有効な対策となります。
*サンプル:ホワイトバランス(色温度)の違い


現像時に使用するモニター、プリンターのカラーマネージメントができていることが前提です。
「Macに比べWindowsマシンはモニターに注意しなければいけない」というのは事実です。それはWindowsの性能が劣っているという意味ではなく、その成り立ちとエコシステムの違いから、色の正確性を担保するためにはユーザー側の知識と一手間がより多く求められる、ということです。
Windowsが搭載されるPCやモニターは、非常に多くのメーカーによって製造されています。その結果、品質や価格帯が幅広く、特に一般向けの安価なモニターでは、色の正確さよりも「鮮やかさ」や「見栄えの良さ」が優先され、工場出荷時の色が大きく調整されていることが少なくありません。
対照的に、AppleはiMacやMacBookのディスプレイを自社で管理し、製造段階で一台ずつキャリブレーション(色調整)を行っています。これにより、ユーザーは特別なことをしなくても、購入した時点で業界標準に近い、比較的正確な色環境を手に入れることができると言われています。Mac miniなど外部モニターを使用する場合は、色の正確性を担保するためにはユーザー側の知識と一手間が求められます。

