「きれいに仕上げただけのつもりだったのに、失格になるらしい」
最近、写真コンテスト、とくに報道・ドキュメンタリー系の世界で、AIツールの扱いが一気に厳しくなっています。
今回は、AIツールの使用に関する特別規定をもとに、「写真とは何か」「編集の線引きはどこにあるのか」を整理します。
写真とは何か、をあらためて定義している
規定の冒頭では、次のように明確に示されています。
AI生成画像は写真ではありません。写真とは、センサーやフィルムに光を記録することであり、物理的な一瞬を記録したものです。
ここがすべての前提です。
- 写真=現実世界の光の記録
- AI生成=現実に存在しなかった情報の生成
この2つは、見た目が似ていてもまったく別物として扱われます。
コンテスト応募写真の大原則
① カメラで撮影されていること
- 合成画像:不可
- 人工生成画像:不可
- ジェネレーティブ・フィル:不可
生成AIが関与した時点で、自動的に失格となります。
② スマートフォン撮影は「標準モードのみ」
スマートフォン撮影で特に注意が必要です。
応募可能
- 標準撮影モード
応募不可
- HDR
- ポートレートモード
- クリエイティブ照明効果
- パノラマ
つまり、スマホの「賢い機能」ほど危険だということです。
条件付きで認められるAI・スマート補正
すべてのAIツールが禁止されているわけではありません。
判断基準は、次の3点です。
- 画像全体に重大な変化を与えないこと
- 新しい情報を追加しないこと
- 撮影された情報を削除しないこと
使用が認められる可能性のある例
- ノイズ除去(Denoise)
- 自動補正(露出・色・コントラストなど)
- 被写体選択・オブジェクト選択(ローカル調整目的)
「写っているものを整える」まではOK。
「写っていないものを作る・消す」はNG。
即ルール違反となるツール
以下のツールは、明確に使用禁止とされています。
- Adobe Super Resolution
- Topaz Photo AI
理由は、生成AIモデルを基盤としており、拡大やシャープ化の過程で新たな情報を生成・付加するためです。
見た目が自然かどうかは関係なく、仕組みの時点でアウトと判断されます。
Lightroom・Photoshopで迷いやすいポイント
問題になりにくい操作
- 露出・ホワイトバランス調整
- トーン・カラー調整
- 常識的な範囲でのトリミング
- ノイズ除去
- 被写体マスクによるローカル調整
避けるべき操作
- 空の置き換え
- 生成拡張・生成削除
- 超解像・AIアップスケール
審査で問われるのは「意図」ではない
- 「知らなかった」→通用しない
- 「少しだけ」→関係ない
- 「自然に見える」→判断基準にならない
最終的な判断は、コンテスト主催者および国際審査員団が行います。
問われるのは、その写真が現実の記録として成立しているかどうかです。
まとめ:AI時代の写真の境界線
AIは「現実を整える助手」ならOK。「現実を書き換える存在」になった瞬間、写真ではなくなる。
便利になったからこそ、「何を使えるか」よりも「何を守るのか」が、今あらためて問われています。


